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拍手用ボツ小ネタ―中岡さんシリーズ編.獣と小鳥さん―

20100517

 タイトルの通り我が家においてある中岡さんシリーズの拍手ネタに使おうとしてボツになった掌編です。
 いまいちサイトに上げるか上げまいか微妙な作品なのでここにおいておきます。
 御託はいいからさっさと見せろやという漢なお方は続きを読むをクリックしてご覧ください。
 彼は見つめる。使うことの無い鉤爪を持て余しながら、緩やかに上下する小鳥の喉笛を。小さな身体で鼓動を刻みながら、無防備な様子を見せるその滑らかな曲線を見れば、どうにかしてやろうかという思惑が浮かんでくるのも仕方が無い。
 少しこの鉤爪でその小さな喉もとをくすぐってやろうか。今のところ起こすつもりも無いので、その程度の悪戯を企んでみる。けれど相手は眠っている。くすぐったところで、少し身じろぎする程度だろう。すぐに飽きる。
 じゃあどうしてやろう。彼は鉤爪をすり合わせて暫し思案する。小鳥が起きる気配は無い。どうにも、この小さな生き物を見ていると、何かしらしてやりたくなる。
 苛烈でない程度に苛めたりだとか、不快にならない程度におちょくったりだとか、そういう事をしたくなるのは彼にとって日常茶飯事だし、試さない時も思いとどまるときも滅多になかった。
 今もそうだ。起こしたいわけではないけれど、何かを試してみたくなる。こうしたらこうするだろうと予測し、実行したところで予想通りだと、してやったりというような優越感も得られる。
 彼にも解っている。捻くれているのかそれとも単純なのか、どちらにしろこれは、ある種の支配欲だ。自分は彼女を知っている、思い通りに出来ている、と思うことに悦びを感じている自分を、彼は否めない。かと言ってあえて口に出したりはしないが。
 そういう自分を客観的に見れば気分が悪くなるような気がするのも自覚してはいるが、これは性分だし、何よりこの小さな生き物だってそれを拒んだ事はなんだかんだで一度も無い。
 困ったそぶりを見せるときはある。困惑したようにしどろもどろになったりもする。挙句の果てには挙動不審になって最終的に自滅したりするときさえある。
 それでも、心底嫌だと言ったこともなければ顔に出したこともなく、またそういう感情の片鱗も見られない。つまり、彼を、拒んでいない。どこかで、そういうものを、試しているのかもしれない。違うことをしているようで、根本的には同じことの繰り返し。
 そういう事を確かめて、安堵して、愉悦に浸り、また確信を取り戻す。躍らせているようで、実のところは踊らされているだけなのかもしれない。でも、それでもいい。それがいい。
 密かに彼は思う。この鉤爪に触れても、特に怖がったり驚いたり、物珍しそうにしたりもしない。いつものように無防備に擦り寄るだけだ。だから、それこそがいい。そういうものだから、彼も手放すなんて発想に至らないのだろう。

 今、この鳥かごには二つの生き物が居る。小さな生き物と、鉤爪を持つ生き物だ。鳥かごは鉤爪を持つ生き物のもので、小さな生き物はそれに寄り添っている。
 出口はいつでも開いている。いつ出ていったっていいんだ。けれど小さな生き物が居ようが居まいが、鉤爪を持つ生き物は出て行かない。そんなことをほのめかすように、いつでも開けっ放しだ。
 それでも小さな生き物は出て行かない。鉤爪を持っているくせにどこか臆病な一面を持つ生き物に気付いているからだろうか。それとも、気付いていないけれど出て行かないのか。
 どちらでもいい。彼女はここに居る。穏やかに眠り続け、当分は二人っきり。籠が閉じていようが開いていようが、二人っきりなのだ。
 彼は、小さく上下する身体を見つめて、満ち足りたように微笑を浮べた。


 休日の夕方に、約束していたわけでは無いけれど、ちょっと顔を見に訪れた。そうしたら彼はソファで転寝をしていたようで、特にすることもなかった南夕はしめしめとソファの足元に座り、間近で彼の寝顔を見つめた。
 そこまでは覚えてる。けれど、一体全体、どれだけ経ったのか。いつ寝入ってしまったのかさえ、覚えていなかった。
 彼女が目を覚ましたそのとき、目の前には王子様が――なんて。御伽噺か夢の中だけでしょう。一応現実というものを知っている彼女も、それを理解していた。
 けれど、これって、夢? 夢から覚めて、また夢? そう思いたくなる、突飛な現実がそこにあった。
 ついついとぼけて、首を捻る。すると、頬を撫でるように、軽やかに髪をすくわれた。
「寝ぼけてる?」
 まるで王子様に匹敵するスマイルで、彼が囁いた。
 まるで夢のまた夢だ。滅多なことでないと、彼はこんな微笑は見せない。というか、ここまでごく自然で、穏やかでさえある微笑なんて、奇跡に等しい――は、言い過ぎかもしれない。
 なんにせよ、なんだろう。この現実離れしたシチュエーションは。
「なか、おか……さん?」
「はい。中岡ですが」
 こんな事務的な応対だけ聞いていれば、いつもの中岡なのに。
 というか、なんで、こんな極上の微笑で見つめられているのだろう。もしかして、誕生日? いやいや、それにはまだ早すぎる。というか彼が誕生日でこんな最上級にも等しい微笑を浮べるなんてありえない。
 ああ、いけない。突飛な現実のお陰で、思考さえ現実離れしてきた。早速頭の中も沸いてきたらしい。
「あ、の……」
「ん?」
 これまたにこやかに首を傾げる。
 ああ、しかもなんだか可愛く見えてきた。無防備に首傾げちゃって、なんて可愛い仕草だろう。きっと彼も寝起きなのだろう。そうでなければどうしてこんな、普段の五倍比はある感情表現を見せてくれるだろうか。
「南夕?」
 気遣うように頬を優しく撫でられて、意図せずもまた、ぽっとしてしまう。
 これじゃあ何かいいことあったんですか? なんて聞けやしない。顔もまともに見れなくなってきたのだから。
 もっと見ていたいけれど何故だか逃げ出したくなるような気恥ずかしさを覚える。ああどうしよう、どうしよう。
「……ッ……あ、……あしゅ、う、さん……」
 言って、しまった。何故このタイミングで。何故だか言いたくなってしまったのだから仕方が無い。顔が真っ赤なのはご愛嬌。
 一瞬、驚いたように目を見張った彼は再び微笑んで――なでなで。南夕の頭を、優しく撫でた。
「……よくできました」
 ご褒美は、頬にキス。極上に優しい、暖かい口付けだった。南夕の心が羽のように舞い上がるのも、簡単なもの。
 ――その後は、なんだか彼が終始ご機嫌で、戸惑うばかりの小さな生き物だった。

end.

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そういえば誕生日ネタ書いたことないと今気づいたとみなう。
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